本書の内容
ロシアのウクライナ侵攻に際して公然と核の威嚇が語られ、「核の同盟」NATOにフィンランドとスウェーデンが加入するなど、近年、核抑止への新たな期待や懸念が高まっています。一方、北東アジアでは、2030年代に3大核大国の一角を形成すると目される中国や、安保理決議違反の核兵器開発に邁進する北朝鮮のように、透明性に多くの問題を抱えた核兵器国や実質的な核保有国の存在があります。
核兵器をめぐる国際政治や国際安全保障環境が大きく揺れ動く中、今後「核時代」は新たな転換点へ向かうのでしょうか。本書はこの問いに対し、防衛省防衛研究所で安全保障を専門とする研究者7名が、理論研究と政策研究の両面から詳細に分析し解き明かしていきます。
■本書「序章」より
今後「核時代」は具体的にどのような政治的・軍事的変化を遂げ、いかなる国際安全保障環境を生むのだろうか。とりわけ、核抑止や戦略的安定、核の威嚇に基づく強要、宇宙、サイバー、電磁波空間に拡大するドメインと核兵器システム、そして軍備管理はどう変化し、あるいは変化しないと考えられるのだろうか。本書はこうした問題意識に基づき、新たな「核時代」の地平を学術的な視座から問い直すものである。
編著者について
一政 祐行
防衛省防衛研究所 政策研究部 サイバー安全保障研究室長
専門分野は軍備管理・軍縮・不拡散、安全保障論。博士(国際公共政策、大阪大学)。平和・安全保障研究所安全保障奨学・研究プログラム14期フェロー、ケンブリッジ大学政治・国際関係学部客員研究員などを歴任。著書に『検証可能な朝鮮半島非核化は実現できるか』(信山社、2020年)、『核実験禁止の研究―核実験の戦略的含意と国際規範』(信山社、2018年。2019年度国際安全保障学会・第31回最優秀出版奨励賞〔佐伯喜一賞〕受賞)ほか
目次
序 章 核時代の新たな地平とは
第1章 戦略的安定の理論的再検討—核未満のレベルとの相互作用を中心に—
コラム:核戦略の論理をめぐる二潮流
第2章 強要と核兵器—能動的核威嚇の成功条件の考察—
コラム:評判による抑止と強要
第3章 新領域と核兵器システム—核抑止・軍備管理への意味合い—
第4章 核兵器政策と核軍備管理—大国間競争下での合理的軍備管理措置—
コラム:非核兵器国の核レバレッジとイラン
終 章 「第二の核時代」の将来に向けて