本書の内容
「安全保障」をめぐる我が国唯一の国立シンクタンクである防衛省防衛研究所は、さまざまな刊行物を通して自らの研究成果のアウトリーチにも意欲的に取り組んでいます。『東アジア戦略概観』は年1回の刊行を重ねて今回25年目を迎えており、その間、「本書の内容が、研究者の立場からの独自の分析・記述であり、日本政府あるいは防衛省の見解を示すものではないという編集方針」(本書「はしがき」)を変えることなく、変貌めまぐるしい国際政治や安全保障をめぐる諸相を分析・詳述しています。
2021年版の本書では、まず新型コロナウイルスが米中の大国間競争にもたらす作用を「分断」「多元化」「戦略的自律」などのキーワードから捉え、続いて各国における米中競争への対応や新型コロナウイルスが内政や外交に与える影響、そして安全保障の視点からのトピックなどについて展開していきます。安全保障や国際政治を扱う書籍は多数刊行されていますが、学術書としての立ち位置で書かれ、比較的平易な文章を通して第一級の研究者たちによる最新の知見に触れることができる本書の存在は貴重であるといえるでしょう。
目次
第1章 大国間競争に直面する世界 ― コロナ禍の太平洋と欧州を事例に
第2章 中国 ― コロナで加速する習近平政権の強硬姿勢
第3章 朝鮮半島 ― 揺れる南北関係
第4章 東南アジア ― ポスト・コロナの安全保障課題
第5章 ロシア ― ポスト・プーチン問題と1993年憲法体制の変容
第6章 米国 ― コロナ危機下の米国の安全保障
第7章 日本 ― ポスト・コロナの安全保障に向けて