本書の内容
アメリカのオーラルヒストリアン、ヴァレリー・R・ヤウによるRecording Oral History: A Guide for the Humanities and Social Sciences, Second Edition(2005年出版)の翻訳書。
初版は1994年に出版され、オーラルヒストリーを学び、実践する研究者が行うべき綿密なインタビューの手法から始まり、史資料としての保存、公開に至る実践のためのテキストとして高い評価を得た。この初版と2005年に出版された第2版の際立った違いは、初版 が世に出て以降のオーラルヒストリーの学問的正当性を問う2つの大きな論点、すなわち語り手の証言あるいは語りの記録の正確さにかかる人間の記憶という問題と、収集されたオーラルヒストリー資料の分析、解釈についての論述を2つの章として新たに設けた点にある。また第2版発刊にむけて、ロナルド・グリー リーや、アレッサンドロ・ポルテリをはじめとするオーラルヒストリー分野の先駆的役割を担ってきた歴史家や社会学者、その他オーラルヒストリーに関連する 分野の専門家が原稿に目を通し、彼らの視点や指摘が本書に反映されていることも、総合入門書としての価値を高めたと言えるだろう。(「本章の刊行に当たって」より)
著者について
Valerie Raleigh Yow(原著者)
ウィスコンシン大学より歴史学の博士号を取得。ノースカロライナ大学南部オーラルヒストリープログラムにおいてオーラルヒストリーの方法論を学ぶ(ハーバード大学教育学大学院およびボストンカレッジで研究生活を送った後)。1970年代半ばより、多くのオーラルヒストリープロジェクトに取り組む一方で、ブルックリンカレッジ、ロードアイランド大学、ノーザンイリノイ大学で教鞭を執り、オーラルヒストリーのインタビュアー養成に情熱を注いだ。また、30年にわたってアメリカオーラルヒストリー学会で活動し、7年間学会誌Oral History Reviewの書評エディターを務め、続いて学会評議員に就任するなど、主要な役割を果たしてきた。
吉田かよ子(監訳・訳)
上智大学文学部卒。ブリティッシュコロンビア大学コミュニティ・地域計画大学院修士課程修了(M.A.)。在日米国大使館広報文化交流局、北星学園女子短期大学を経て、北星学園大学短期大学部教授。日本オーラル・ヒストリー学会初代会長(2004-2005)。
平田光司(訳)
筑波大学で素粒子論を専攻(理学博士)後、高エネルギー加速器の理論を専門とするようになり高エネルギー加速器研究機構に勤務。現在の主な専門は科学技術社会論(STS)。総合研究大学院大学先導科学研究科教授。
安倍尚紀(訳)
情報科学博士(東北大学)。総合研究大学院大学上級研究員、東京福祉大学専任講師の後、現在、九州大学・学術研究員。「情報化をはじめとする科学技術は人間を幸せにするのか」という問いに基づいて、社会学・経営学の視点から、情報の流通・保存・管理が社会に及ぼす影響を研究。
加藤直子(訳)
フェリス女学院大学文学部卒。総合研究大学院大学先導科学研究科・博士課程在籍。茨城大学農学部地域環境科学科・産学官連携研究員。主に計量的手法を用いて、人間行動を社会的、文化的、心理的観点から学際的に研究している。
目次より
・本書の刊行に当たって
・原著者による前書き
・第1章 綿密なインタビュー入門
・第2章 オーラルヒストリーと記憶
・第3章 インタビュープロジェクトの準備
・第4章 インタビューの技法
・第5章 法的な問題と倫理
・第6章 インタビューにおける対人関係
・第7章 オーラルヒストリープロジェクトの諸相-コミュニティ研究
・第8章 オーラルヒストリープロジェクトの諸相-伝記(バイオグラフィー)
・第9章 オーラルヒストリープロジェクトの諸相-家族史研究
・第10章 分析と解釈
・第11章 プロジェクトの完了
・附録
1. A インタビューガイドの見本
2. B オーラルヒストリー学会(OHA)のオーラルヒストリー評価ガイドライン
3. C オーラルヒストリー学会(OHA)の原則と基準
4. D 施設内治験審査委員会(IRB)による審査から除外されたオーラルヒストリー
5. E 記録保存シートの見本
6. F 法的な公開承諾書
7. G フェイスシートおよび情報シートの見本
8. H テープ索引の見本
9. I テープコレクションのマスター索引1ページ目見本
10. J コンピュータを用いたトランスクリプトの索引付け指示書
11. K オーラルヒストリーの引用
・索引
・本翻訳書の経緯
・日本におけるオーラルヒストリーについて
・原著者略歴
・訳者略歴