推薦コメント
ブレイディみかこ 保育士、ライター、コラムニスト
階級、環境破壊、ハラスメント。現代が抱える問題の坩堝(るつぼ)のような職場を描きながら、それが一面的な批判に終わらないのは、著者も「そこ」にいた人だからだ
どんな社会学の本を読むより、このコミックを読んだほうがわかることがある
金原瑞人 翻訳家
ここで描かれていくのは、肉体的、精神的に疲弊していく自分と折り合いをつけながら、ある意味、したたかに生き抜いていく彼女の姿だ。彼女を支えているのはたくましさではなく、しなやかさだ。ユーモアや自分なりの考えと感性を武器としてではなく、防具としてじつにうまく使っているところに説得力がある。この作品は、男女を問わず、これからを生きる人たちすべてにとってのバイブルになりそうだ。
原 正人 サウザンコミックス編集主幹
前途ある若者がどうしてこんなにも無意味な足止めを食らわなければならないのか。未来ある若者につきつけられた不条理に怒りを覚えざるをえないが、そんな人たちにとって、本書は心の底から共感できる本であるはずだ。
「本のチャンネル」 訳者 椎名ゆかりさんインタビュー
著者 ケイト・ビートンから 日本の読者の皆様へ
これは、ごく普通の一般的な家庭に育った私が、若いころにカナダ北部のオイルサンドで働いた体験を綴った物語です。本書を皆様に楽しんでいただければ嬉しく思います。
物語を書いていた時、他に現場で働く人たちの体験を伝える漫画はないか探していました。その中で特に印象的だった作品が『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』(竜田一人著)です。現場の人たちの体験記は多くありませんでしたが、日本には多様で豊かな漫画文化があることに鑑みれば、このような素晴らしい作品が生まれたことに驚きはありませんでした。
本書も同様に、一般にはあまり知られていない産業の実態を伝え、読者の心に響くことを願っています。マスコミや企業が伝えるメッセージ、大企業や政府が作ってしまう世論を超えて、そこで働いた体験をありのままに描いています。本書はカナダを舞台にしていますが、企業と働く人たちとの力関係のありようは世界共通と言えるでしょう。
インターブックスから本書が発行されること、そして漫画の力を真に評価してくださる業界や読者たちの一部になれることに感謝しています。どうか本書があなたの心にも響きますように。
感謝を込めて
ケイト・ビートン
著者 ケイト・ビートン
(Kate Beaton)
カナダのマンガ家。大学で歴史と文化人類学の学位を取得後、学生ローン返済のため2年間、オイルサンドのプラントで働く。その間に『Hark! A Vagrant』のタイトルでウェブコミックの創作を始め、世界中の読者を魅了。作品集『Hark! A Vagrant』や『Step Aside, Pops』は、『ニューヨーク・タイムズ」のグラフィックノベルのベストセラーリスト、『タイム』『ワシントン・ポスト』などでその年のベストリストに名前を連ねた。アイズナー賞、イグナッツ賞、ハーベイ賞、ダグ・ライト賞を受賞。
訳者 椎名ゆかり
海外マンガ翻訳者、東京藝術大学非常勤講師、デジタルハリウッド特任教授。文化庁参事官付芸術文化調査官(メディア芸術担当)。アメリカ・オハイオ州ボーリンググリーン州立大学大学院ポピュラーカルチャー専攻修士課程修了。海外マンガや論文の翻訳及び海外におけるマンガ状況について執筆を行う。主な訳書に『ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』、『マンガ学 マンガによるマンガのためのマンガ理論』、『ザ・ボーイズ』、『モンストレス』など多数。