本書の内容
9人の個性豊かな夢想家たちの人生に触れる幻想的な物語集。歴史や地理、現実と夢の境界を自在に飛び越え、王、スパイ、皇帝、役者、カラス、狼男といった多彩な登場人物が、人生・愛・力・闇といったテーマをめぐる“夢”という秘密の物語を語り継ぐ。
「3度の9月と1度の1月」では、デスペアがドリームに挑戦を持ちかける稀有な展開が描かれ、デザイア、デリリウム、デスといったキャラクターも絡み合いながら物語が進行する。
「カラスの群れ」では、カインとアベルがリタ・ホールの息子に向けて「イブは3人いた」という奇妙な昔話を語り、ジル・トンプソンによるドリームとデスの幼少期の姿が読者の心をつかみ、スピンオフシリーズの誕生へとつながった。
「ラマダン」では、栄華を極めたバグダードを愛する指導者の物語が、鮮やかな色彩と独特のコマ割りによって高く評価され、サンドマン連載中で最大の販売部数を記録。
終盤には、ドリームの運命を揺るがす「オルフェウスの歌」を収録。壮大な世界観と繊細な心理描写が融合し、物語は加速しながらクライマックスへと突き進む。
原作:Sandman Vol. 6: Fables & Reflections – 30th Anniversary
著者について
ニール・ゲイマン
イギリスの作家。1960年生まれ。短編・長編小説、コミックブックやグラフィックノベルの原作、声劇や映画の脚本で知られる。代表的な作品には『サンドマン』、小説『スターダスト』、『アメリカン・ゴッズ』、『コララインとボタンの魔女』などがある。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ブラム・ストーカー賞、世界幻想文学大賞など多数の文学賞を受けている。
ニール・ゲイマンが陰陽師の世界を書き、イラスト天野義孝、夢枕獏翻訳の『夢の狩人』(原題:The Sandman: The Dream Hunters)は2000年にヒューゴー賞の関連書籍部門にノミネートされた。スタジオ・ジブリの「もののけ姫」の英語版の脚本でも知られる。米国ミネソタ州在住。
翻訳者について
金原 瑞人
1954年、岡山市生まれ。法政大学名誉教授・翻訳家。訳書はシアラー『青空のむこう』(求龍堂)、グリーン『さよならを待つふたりのために』(岩波書店、共訳)、モーム『月と六ペンス』(新潮社)など650冊以上。
ニール・ゲイマンの作品も多数翻訳しており、訳書に『墓場の少年 ノーボディ・オーエンズの奇妙な生活』、共訳に『アナシンの血脈』『グッド・オーメンズ』『アメリカン・ゴッズ』『壊れやすいもの』(以上KADOKAWA)、『物語 北欧神話』(原書房)がある。エッセイ集に『翻訳はめぐる』(春陽堂書店)、日本の古典の翻案に『雨月物語』(岩崎書店)『仮名手本忠臣蔵』(偕成社)など。
目次
落ちるのが怖い
FEAR OF FALLING From VERTIGO PREVIEW #1
序文 クライヴ・バーカー
Introduction by Clive Barker
前書き ジーン・ウルフ
Foreword by Gene Wolfe
3度の九月と1度の一月
THREE SEPTEMBERS AND A JANUARY
From THE SANDMAN #31
熱月(テルミドール)
THERMIDOR
From THE SANDMAN #29
狩り
THE HUNT
From THE SANDMAN #38
八月
AUGUST
From THE SANDMAN #30
柔らかいところ
SOFT PLACES
From THE SANDMAN #39
オルフェウス
ORPHEUS
From SANDMAN SPECIAL #31
カラスの群れ
THE PARLIAMENT OF ROOKS
From THE SANDMAN #40
ラマダン
RAMADAN
From THE SANDMAN #50
略歴
Biographies
訳者後書き